巻二・挽歌(全巻の中で最初の「挽歌」の冒頭6首)で、人麻呂と万葉集は何を傷み、何を表現したのだろうか?
- 有馬皇子個人の死、あるいはその運命を傷んだ
- 有馬皇子の策謀が功を奏した場合に、期待できたはずのことを傷んだ
- 有馬皇子を例とする過去・現在の権力闘争全体の犠牲者一般を傷んだ
- 繰り返される権力闘争への批判、争いと抑圧への反感、全体として平和と自由の欠如、これらを意識しないが、結果として表現した
- 政変の度に、失われる(やまと)の精神遺産である歌や歴史などの諸文献を傷んだ
第146歌(柿本人麻呂歌集中の歌)
- 後将見跡 君之結有 磐代乃 子松之宇礼乎 又将見香聞(新日本古典体系)
- のちみむと きみがむすべる いはしろの こまつがうれを またもみむかも (万葉集釈注)
- 後に見ようと思って皇子が結んでおいた岩代の小松の梢を皇子はまた見たであろうか (新日本古典体系)