京都で最も古い禅寺として知られる建仁寺で仏像が盗まれた事件を報道しました.
単なる窃盗事件ではなく、文化財・信仰の対象という点で、報道は当然です. もし、海外で競売に出されたらどうでしょうか?
同じことが、中国とフランスの間に起こりました.
清朝時代に北京の庭園「円明園」から流出した銅の2つの動物の像が、イブ・サンローラン氏の遺品として、パリで競売に出されたのです. 国際的な問題となり、まだ解決していません.
中国と日本との間にも未解決の問題があります.(朝日新聞 2006年5月28日)
- 日露戦争後に、旧日本軍が対中侵略推進の決意として中国大連から略奪し、明治天皇に献上しました.
- あへん戦争から、60数年後、「円明園」から流出した銅の2つの動物よりはるかに歴史的意味の大きな文化財です.
- その後、中国に返還されることなく、現在でも他の略奪物と一緒に宮中にあります.
- 日本(天皇家)は、返還の意志を表明してはいません. つい最近も、現職の自衛隊航空幕僚長が「日本は、侵略戦争をおこなったことはない(略奪をしたことはない)」の趣旨の論文を出し、また、同様の教育を自衛隊内でおこなっています.
(当時の防衛大臣・現在の農水相は、この航空幕僚長が憲法を否定したとき、それを容認し、その防衛大臣を首相は黙認しました.NHKもそれを憲法上問題であるとはしませんでした)
旧日本の対中国侵略戦争推進の象徴として、中国から略奪した文化財が、現在でも宮中に温存されているのでは、いくら歴代の首相が「過去の一時期、近隣諸国民に多大な損害と苦痛を与えた」といっても、国際的に理解されるでしょうか?
ここには、日本の戦争責任をあいまいにしている現状の象徴があります. 日本が「変わる」ためには、避けて通れない点です.
歴史を学び、誤りを正すことも放送の重要な使命です.