(前略)零下二十度の空氣だつた。(中略)
夜はまだ薄明りもしてゐなかつた。雪を含んだ暗い空の下で、街は地の底からジーンと靜まりかへつてゐた。(中略)
皆は一人々々警官に腕をくまれて外へ出た。(中略)
今、この九人の組合員は、九人といふ一つ、一つの数ではなしに、それ自身何かたつた一つのタンク(戦車)にかわつてゐた。
彼等は互に腕と腕をガツシリ組み合せ、肩と肩をくつつけ、暗いしかし鋭い眼で前方を見すえ、――それはあたかも彼等のたつた一つの目標に向つて――「××」に向つて、前進してゐるかの如く、見えた。 (「xx」は、伏字)
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